あいだに立ってぼうっとしているひとにはなりたくない。

文:福島 由衣

「間に立つだけの卸売じゃない。お米の世界で今起こっていることを伝えていくことが使命」

お米の卸売会社 神明さんで働いている中谷さんは、インタビューをさせてもらった私たちじゃなくて、もっと向こうを見ながらそう言った。

中谷さんはいつも元気なひと。どんなときも上機嫌に見える。あまりにも人当たりがいいので、「そのキャラは作っていますか?」と聞いてしまったら、「家でもこんな感じー!」と返ってきた。

その中谷さんから聞くお米の話はすごく面白い。ずうっと聞いていたくなる。

なぜかというと、楽しくお話ししてくれるだけではなくて、お米のこと・それからお米を取り巻く世界のことを全部把握している知識と、熱意があるから。

今回の記事ではそんな中谷さんから聞いたお話をもとに、神明さんのチャレンジと、その姿勢について書いてみます。

 

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いやいや、お米の卸売企業ってそんなことまでやっているの? 《デジタルアグリー》
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ほかの国々とのコネクションってどうやって作っているの? 《海外にゆくお米》

いやいや、お米の卸売企業ってそんなことまでやっているの? 《デジタルアグリー》

日本では超高齢化社会に伴い、農業に携わるひとの数が年々減っている。お米を作っている農家の方の平均年齢は66歳だそう。平均ということはもっと上の年齢の方も現役で頑張っているのだと思うので、からだは大丈夫なのだろうかと心配になる。我が家のお母さんは50代半ばだけれど、家族を守るためにたくさん立ち仕事に打ち込んでくれたからすでに膝を痛めている。そしてこの平均年齢は10年後、20年後ともっと上がっていく計算で、おそろしい。

「日本の食料自給率は38%くらいといわれていて、もし海外からの輸入がストップしたら大変なことになるよね。だから基本の食料ってすごく大事だと思う」。中谷さんが言う。「でも、このままだと将来、基本の食料のお米って作られなくなるんじゃないかな?」

だからデジタルアグリー。

お米をつくる農業をつなげていくためには、若いひとに参加してほしい。だけどバリアがあって、それは汚い・しんどい・お金にならないといった農業のイメージらしい。確かに私も農業はすごく肉体労働だと思っている。小学生時代、学校の行事でサツマイモ掘りに行ったときですらしんどくて、前日まであったワクワク感は疲れて減った。

そのネガティブな印象を変えれば、農業をする人が増えるかもしれない。お米の卸売企業が目をつけたポイントはそこだった。

ドローンを飛ばして土壌をカメラで見る。お米の育ちが悪ければ、そのまま肥料や水を撒いてくれる。また、ITを使う。いま手などの感覚で実り具合を予想している農家の方は多いが、それをシステムで管理する。そうすれば仕事の予定や、係る金銭の計算もしやすくなる。将来的にはスーツで農業をする人が出てくるかもしれない。

そうすると、今は農業に対して明るい印象を抱いていない若者の目も変わるのではないだろうか? だけど農地がいきなりそんな取り組みをするにはリスクがある。「だから僕たちが先陣切ってやってみて、成功すれば教えてあげればいいなって」。中谷さんはそう話してくれた。私はびっくりした。いやいや、お米の卸売企業ってそんなことまでやっているの、と思った。

今は企業内で実験的にデジタルアグリーをしている最中で、作付けまで成功しているとのこと。これから農地面積を広げたりして、さらに試行錯誤を重ねるみたい。想像もしていなかった取り組みだった。実際、この話を聞いて、もしかするとデジタルアグリーなら副業でハードル低く農業に挑戦することも可能じゃないかな? と感じたのであった。(これがほんとのダブルインコメ)